ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」(第60回)転換期を迎えているゴルフ場のビジネスモデル

スポーツ

公開日:2020.07.21

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 新型コロナウイルス感染拡大の影響でゴルフ場の営業形態が大きく変化しました。2020年5月中旬、ゴルフ場を運営する業界団体は連名で「ゴルフ場業界としての『新型コロナウイルス感染症』感染拡大防止ガイドライン」を公開し、加盟団体に周知徹底を呼びかけました。

 その結果、多くのゴルフ場では休憩や昼食を挟まないで18ホールを回りきるスループレーを導入し、レストランを休業したり、ランチ限定営業を行ったり、平時以上に衛生管理を徹底するようになっています。

 ロッカールームやフロント受付などでは、人の滞留を避けるための工夫やソーシャルディスタンス確保が目に付くようになりました。事業者はゴルフ場の運営を維持すること、プレーヤーは快適なゴルフプレーを楽しむことを望んでいますから、今はお互いの協力が不可欠です。

 新型コロナウイルスの感染拡大によってゴルフ場のビジネスモデルは変化を迫られていますが、今後を考えると、日本のゴルフ文化においては良い影響があるのではないかと思うようになりました。今回は、ゴルフ場並びに集客施設におけるビジネスモデルの時流予測をしてみたいと思います。

ゴルフ場の変化

 感染予防に対応しているゴルフ場の営業形態の変化を、もう少し詳しく見てみましょう。従来は、午前中に9ホールをプレーし、クラブハウスに戻り、少々お高めのランチで会食。午後に残り9ホールを回った後、大きな湯船にのんびりつかってプレーの疲れを癒やし、それぞれの家路に就く、そんなルーティンが日本におけるゴルフ場利用の「当たり前」でした。こうしたパターンは昔話になるかもしれません。

 また、従来は、ゴルフ場に着くとクラブハウス玄関でポーターさんがキャディバックを預かり、カートに積み込む作業までをすべて任せることができたコースも少なくありませんでした。しかし、今では、接触機会になるということでこうしたサービスを撤廃し、カートに積み込むまでをプレーヤー自身で行う完全セルフのコースが増えました。このようにサービスを簡素化した分、セルフプレー料金を設定するなど、料金を割り引くコースが多く見られるようになりました。

 さらに、従来は1組4人で回るプレースタイルでしたが、2~3人で回る2サム、3サムをゴルフ場側が推奨することも増えました。乗用カートの使用は、4人で回る場合1組で1台でしたが、安全対策に考慮して2台提供するコースが多くなっています。ゴルフ場の乗用カートは密閉空間ではありませんが、4人が1台に乗り合うと人と人との距離が近くなり、感染リスクが高まるからです。

 もちろん、冒頭にも触れた通り、18ホールスループレーや9ホールだけのプレーを導入するコースも珍しくありません。これまではプレーをスタートする間隔は7分が一般的でしたが、その間隔を広げたコースも見られます。こうしたことにより1日の来場者数を制限して営業するコースは珍しくありません。冒頭に紹介したガイドラインでは三密(密室・密集・密接)の徹底回避をうたっていますが、その具体的な方法として、さまざまな方法が取り入れられているのです。

 こうした中には、夫婦やカップルだけで気兼ねなく回れる、少ない組数でのんびり回れる、18ホールスループレーや9ホールプレーの導入によって多様なプレースタイルが選択できるなど、プレーヤーにとっては好ましい施策もあります。一方、ゴルフ場の経営者にとっては、客数が減ったり、客単価が低下したりするなど、マイナスの施策がかなりあります。

 例えば、日本のゴルフ場の収入全体に対するレストラン売り上げの比率は、かつて15~18%といわれていました。これだけ大きなウエートを占めていたレストランの売り上げが、スループレーの導入などによって減っているのです。多くのゴルフ場経営者は、事業の維持に悩んでいます。

拡大路線では成り立たなくなっている集客施設…

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執筆=小森 剛ゴルフハウス湘南

有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。

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