人生を輝かせる山登りのススメ(第33回)クライマーたちが憧れる大山北壁を登る

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公開日:2018.03.16

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 鳥取県西部にそびえる名峰・大山(だいせん)。そこにクライマー憧れの絶壁があることをご存じでしょうか?登攀(とうはん)が許されるのは冬季のみ、しかも冬の晴天率が極めて低いこの山では、登れるチャンスはごくわずかです。2018年2月27日に、地元のクライマーもシーズン中に数回しか登れないというこの雪の壁、大山北壁(きたかべ)を登ってきました。

ハードな山登りには違いないが、機会があればこの景色を見てほしい

標高からは想像できない雪の世界

 大山(伯耆大山)は中国地方を代表する山で、最高峰の剣ヶ峰(1729m)をはじめ、事実上の山頂である弥山(1709m)や三鈷峰(1516m)などのピークの総称です。ブナの若葉が萌える春、イブキトラノオやシモツケソウなどが一面に咲く夏、カエデやナナカマドが色づく秋と、シーズンを通じて多くの登山者を引き付けます。冬も天候に恵まれれば、夏山登山道が雪山初心者向けのよいルートとなります。

 そんな大山の魅力は、見る方向によって大きく山の形を変えることでしょう。西側からは「伯耆富士」の名の通り、整った裾野の三角形ですが、南側、北側は激しい崩壊壁となっています。特に北側はまるで屏風のように立ちはだかっており、落石も多く、とても人が近づける場所ではありません。

 しかし、この北壁は、不安定な岩が凍り付く冬にのみ登ることができ、アルパインクライマー憧れの地となるのです。2月末、私はその雪壁を登ってきました。そこは、標高わずか1700mの山とは思えない、大迫力の雪山の世界でした。

弥山から見る主稜線(りょうせん)。左は三角点ピークで、右奥は剣ヶ峰

登れる期間はわずか20日前後

 大山北壁が快適に登れるのは2月中旬から3月上旬の約20日間に限られます。というのも、大山は海に近い独立峰で、日本海側気候の影響を直接受けるため、多くの雪が積もるからです。2月中旬までは雪が深過ぎて、進むのがすさまじく困難です。3月上旬を過ぎると気温が上がり、岩も雪も緩みますので危険度が増します。運よく登る機会に恵まれた2月27日、私は大山に詳しい山の先輩と北壁に向かいました。

 夜明け前に麓(ふもと)の大山寺を出発。ヘッドランプの明かりを頼りに、雪の登山道を1時間半ほどたどって、起点となる元谷(もとだに)に到着しました。ちょうど山の向こうが明るくなり、青みを増す空に、真っ白な北壁が浮かび上がってきます。目の前に現れた北壁は想像以上の迫力で、多量の雪に覆われてもなお、その険しさを隠さずにそびえていました。あまりに堂々とした姿に、こちらの気持ちも高まります。

起点の元谷から見る、夜明けの北壁

大充実の雪壁登攀…

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執筆=小林 千穂

山岳ライター・編集者。山好きの父の影響で、子どもの頃に山登りをはじめ、里山歩きから海外遠征まで幅広く登山を楽しむ。山小屋従業員、山岳写真家のアシスタントを経て、フリーのライター・編集者として活動。『山と溪谷』など登山専門誌に多数寄稿するほか、『女子の山登り入門』(学研パブリッシング)、『DVD登山ガイド穂高』(山と溪谷社)などの著書がある。現在は山梨で子育てに奮闘中。

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