弁護士が語る!経営者が知っておきたい法律の話(第101回)企業規模に関係なく注意すべき「人権尊重」

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公開日:2023.02.17

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 経済産業省は2022年9月、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(以下:「ガイドライン」)を作成しました。ガイドラインでは、「企業による人権尊重の取組の普及・促進に向けてリーダーシップを発揮していくことが期待されている」(p2)と指摘しているとおり、企業に人権尊重責任と救済へのアクセスが求められる時代になりました。

 昨今の国際情勢において、企業に対する人権尊重責任は、実際のビジネスにも影響を与えるようにもなっています。米国では、2022年6月21日、ウイグル強制労働防止法(UFLPA)に基づく輸入禁止措置が施行され、同年12月9日、同国財務省が中国人2名とその所属企業など合わせて10団体をマグニツキー法に基づき人権侵害などに関与したとして制裁リストに追加し、資産凍結などを科したと公表しました(NHK:2022年12月10日)。

 米国政府は、人権尊重責任を果たさない企業への人権侵害を理由とした経済制裁を行うようになっており、人権問題が企業の経済活動にも影響を与えるようになったといえます。特に、ウイグル強制労働防止法は、どこの国で製造された物品であったとしてもウイグルに関わる製品などが少しでも含まれている物品について禁輸措置などを行うと定めており、米国は、自国外での人権侵害に厳しい対応を行う姿勢を明らかにしています。

 日本は、中国、米国が貿易相手国の1位と2位を占め、双方の国と経済的に深い関係を有しています。企業も米国政府による人権問題を理由とした経済制裁に対して無関係でいられません。このような国際環境のもとで、企業が人権問題とどのように向き合い、行動をすべきか。2022年に公表されたガイドラインを参考にして、企業のどのような態度が問題となり、どのように問題に対処すべきかを説明します。

人権方針を策定し、人権DDを実施する

 まず、ガイドラインでは、「企業は、その人権尊重責任を果たすため、人権方針の策定、人権デュー・ディリジェンス(以下:人権DD)の実施、自社が人権への負の影響を引き起こし又は助長している場合における救済が求められている」(ガイドラインp6)として、企業に人権方針および人権DDを実施することを求めています。

 そして、ガイドラインでは、人権方針および人権DDの内容について、次の説明を行っています。

・人権方針は、企業が、その人権尊重責任を果たすという企業によるコミットメント(約束)を企業の内外のステークホルダー(企業活動により影響を受けるまたはその可能性のある利害関係者。例えば、取引先や労働組合など)に向けて明確に示すものである(ガイドラインp7)

・人権DDは、企業が、自社・グループ会社及びサプライヤー等における人権への負の影響を特定し、防止・軽減し、取組の実効性を評価し、どのように対処したかについて説明・情報開示していくために実施する一連の行為を指す。そして、人権DDは、その性質上、人権侵害が存在しないという結果を担保するものではなく、ステークホルダーとの対話を重ねながら、人権への負の影響を防止・軽減するための継続的なプロセスである(ガイドラインp7)

 人権方針の策定については、人権尊重責任を果たすとステークホルダーに対して示すものであり、各企業がどのようにコミットしていくかを具体的かつ明確に行うことを列挙し明示していけば良いと考えられます。

取引先の人権侵害も「負の影響」になる…

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