弁護士が語る!経営者が知っておきたい法律の話(第68回)経営リスク拡大、未払い残業代の予防と対応

法・制度対応

2020.05.18

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 近年、企業が未払い残業代を請求されるケースが増えてきています。その背景には、働き方改革が本格化して労働基準監督署の監視が厳しくなったことや、人手不足による転職者の増加に伴い、新しい会社に移る前後に残業代の支払いを求める人が増えたことが要因として考えられます。

 労働基準監督署による賃金不払残業の是正対象となった企業は、2016年1349社、2017年1870社、2018年1768社。支払われた割増賃金の1社当たりの平均額は、それぞれ943万円、2387万円、704万円に上ります(厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果」より)。

 そうした状況の中、2020年3月27日、残業代などの未払い賃金を請求できる期限(賃金請求権の消滅時効期間)について、従来の2年から当面3年に延長する改正労働基準法が成立しました。これは、4月1日から施行される改正民法において債権の消滅時効期間が原則5年になることに対応するもので、4月1日以降に支払われる賃金から適用されます。さらに将来的には、民法同様、5年に延長されることが想定されています。

 企業が労働者に対する未払い残業代を放置しておくことは、そもそも労働基準法に違反し許されず、また、労働者から仕事のやりがいや職場への愛着を奪うことになり、さらには、時効期間の延長により今後一層の経営上のリスクともなります。

 そこで今回は、厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(以下:「ガイドライン」)などを参考に、企業が取るべき未払い残業代の予防と対応について解説します。

そもそも残業代とは何かを確認

 「残業代」という言葉は、広く一般的に使われていますが、労働基準法などにはそのような文言はありません。【1】時間外労働(1日8時間、週40時間を超えた労働)【2】法内残業(時間外労働には該当しないが、労働契約所定の労働時間を超えた労働)【3】深夜労働(午後10時から午前5時までの労働)【4】法定休日労働(法定休日〔週1日〕における労働)における賃金を総称したものを指します。

 それぞれの割増率は、【1】は通常の労働時間または労働日の賃金(月給制の場合、1時間当たりの賃金(時間単価))の25%以上、【2】は通常賃金(時間単価)と同額、【3】は25%以上(①の時間外労働が深夜に及んだ場合は、50%以上)、【4】は35%以上です(労基法37条1項4項)。

 今回のテーマである「未払い残業代」とは、これら【1】~【4】によって発生した賃金が支払われないままになっていることをいいます。

未払い残業代が生じないようにする予防策…

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執筆=上野 真裕

中野通り法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)・中小企業診断士。平成15年弁護士登録。小宮法律事務所(平成15年~平成19年)を経て、現在に至る。令和2年中小企業診断士登録。主な著作として、「退職金の減額・廃止をめぐって」「年金の減額・廃止をめぐって」(「判例にみる労務トラブル解決の方法と文例(第2版)」)(中央経済社)などがある。

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