弁護士が語る!経営者が知っておきたい法律の話(第54回)事業承継トラブルを回避する遺言の残し方とは

法・制度対応 事業承継

公開日:2019.03.25

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 中小企業のオーナー経営者の相続対策とは、単なる財産の承継にとどまらず、必ず事業承継の問題を含みます。次世代への円滑な事業承継は、従業員の雇用継続などにも大きく影響します。

 オーナー経営者とって、オーナー相続対策=事業承継対策は、最後の社会貢献といえます。昨年、相続法が大幅に改正され、今年から段階的に施行されていきます。事業承継対策は、今後、相続法改正を踏まえたものでなければなりません。今回は、相続法改正を踏まえた事業承継対策について解説します。

自筆証書遺言が使いやすくなった

 相続対策で、まず考えられるのが遺言です。遺言には、自分自身で遺言書を書く方法(自筆証書遺言)と、公証人に公正証書として遺言を作成してもらう方法(公正証書遺言)があります。公証人に依頼する必要がある後者と比べると、前者は費用も安く済み、手軽ではあるのですが、遺言者が「自筆」で全部書かなければならない点が負担でした。

 そこで、今回の改正で、作成が一番面倒である「財産目録」(遺言書の別紙)についてのみですが、ワープロ・パソコンを利用してもよいものとなりました。財産目録は、相続の対象となる財産をすべて列挙する必要があり、それなりに不動産などを所有している場合、かなりの手間になっていたのです。これについては、すでに2019年の1月13日から施行されています。

 自筆証書遺言に関しては、遺言書を法務局で保管するという制度も設けられ、2020年7月10日から利用することが可能になります。これまで、自筆証書遺言に係る遺言書は、自宅で保管するケースが多く、紛失や、相続人による廃棄、隠匿、改ざんの恐れがありました。この制度を利用すれば遺言の有無につき検索することができるので、せっかくの遺言が紛失する危険や、廃棄や隠匿の心配もなくなります。

 また、従来は遺言(公正証書遺言を除く)の保管者や、それを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後には、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求しなければなりませんでした。検認とは、相続人に遺言の存在と内容を知らせて、内容を明確にして偽造・変造を防止するための手続きのことです。今後は、保管制度を利用すれば家庭裁判所での検認の手続きは不要になります。

保管制度を利用しても遺言無効の主張がなされる可能性が…

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執筆=松嶋 隆弘

日本大学〈総合科学研究所〉教授、弁護士(みなと協和法律事務所)

主要著作として、山川一陽=松嶋隆弘編『相続法改正のポイントと実務への影響』(平成30年、日本加除出版)、松嶋隆弘=渡邊涼介編『これ一冊でわかる! 仮想通貨をめぐる法律・税務・会計-』(平成30年、ぎょうせい)、松嶋隆弘編『法務と税務のプロのための 改正相続法 徹底ガイド』(平成30年、ぎょうせい)、丸橋透=松嶋隆弘編『資金決済法の理論と実務』(平成31年、勁草書房)等多数。

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