弁護士が語る!経営者が知っておきたい法律の話(第84回)事業承継時の所在不明株主対策、5年が1年に短縮

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公開日:2021.09.28

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 中小企業経営者の高齢化が問題になっています。その対策として事業承継の円滑化を図ることなどを目的として、いわゆる経営承継円滑化法(正式名称:「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」)が用意されています。今回、その一部が改正され、2021年8月2日より施行されました。

 中小企業が株式会社の形態で経営されている場合、所在が分からなくなった株主が存在することによって、円滑な事業承継が妨げられるケースが生じることがあります。所在不明株主に関しては、会社法が規定を置いており、5年以上音信不通の株主の株式については、会社が買い取ることなどができるとされています。しかし、「5年」という期間の長さが、事業承継の際に、この手続きを利用する上でのハードルになっているとの指摘もありました。

 そこで、今回施行された改正法は、こうした所在不明株主に関する会社法の規定に特例を設けて、事業承継のニーズの高い株式会社に限って、上記「5年」を「1年」に短縮しようというものです。

 本稿では、この経営承継円滑化法の改正について、概要を解説します。

経営承継円滑化法の概要

 まずは、経営承継円滑化法の概要について見てみましょう。改正前の経営承継円滑化法は、事業承継に伴って生じることのある下記3つの問題に対応するために、それぞれ支援措置を設けていました。

所在不明株主に関する会社法の規定

 特例が設けられることとなった会社法の制度、すなわち「所在不明株主の保有する株式の競売・売却に関する制度」とは、次のようなものです。

 株式会社は、【1】株主名簿上の株主に対する通知・催告が5年以上継続して到達せず、かつ、【2】その株主が継続して5年以上剰余金の配当を受領しない場合に、その所在不明株主が保有する株式の競売または売却が可能になるという制度です。株式を売却する場合、その株式の全部または一部を自社で買い取ることも可能です。この買い取りは、取締役会設置会社では取締役会の決議によって決定します。

 競売代金または売却代金は、受け取るべき株主が所在不明であることから、法務局に供託されることになります。

 これは、所在不明株主が増えると、株主総会決議の成立に支障を来し、会社の運営が困難になる場合も生じ得ることなどから設けられた制度です。

改正経営承継円滑化法による会社法の特例…

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執筆=植松 勉

日比谷T&Y法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)、平成8年弁護士登録。東京弁護士会法制委員会商事法制部会部会長、東京弁護士会会社法部副部長、平成28~30年司法試験・司法試験予備試験考査委員(商法)、令和2年司法試験予備試験考査委員(商法)。主な著書は、『会社役員 法務・税務の原則と例外-令和3年3月施行 改正会社法対応-』(編著、新日本法規出版、令和3年)、『最新 事業承継対策の法務と税務』(共著、日本法令、令和2年)など多数。

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