アスリートに学ぶビジネス成功への軌跡(第8回)東京五輪の華、東洋の魔女たちと鬼の大松監督の絆

人材活用

2019.02.28

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 オリンピックの開催を間近に控え、東京はそわそわと浮き足だっているようだった――。この描写の舞台は、半世紀以上前の日本である。今以上の盛り上がりを見せていた。

 1964年10月1日、東京と新大阪を結ぶ夢の超特急が開通。その10日後には待ちに待った第18回夏季オリンピックが開幕した。第二次大戦の敗戦から復興したことを世界に示したいという国民の思いが三波春夫の歌う東京五輪音頭に乗って日本中に広がっていった。

 そうした晴れやかなムードとは一線を画すように、大阪郊外、貝塚市にあるニチボー貝塚(現:ユニチカ)の体育館では、女子バレーボール日本代表チームが練習に没頭していた。日本代表選手の大半が、当時、実業団チームの強豪だったニチボー貝塚に所属していたからだ。

 率いるのは大松博文監督。すでに大松監督とチームは1961年のヨーロッパ遠征で22連勝という快挙を成し遂げ、翌62年の世界選手権では宿敵であったソ連(現ロシア)を破り、悲願の優勝を果たしている。

 それらの試合で大きな武器となったのが“回転レシーブ”だった。高い身長を生かした欧米チームの攻撃力に対抗するために、守備に力を入れるべきだと大松監督が考案したプレーである。遠くのボールに食らいつき、レシーブすると、回転してすぐさま次のプレーに備える。まるで柔道の受け身のようにコート上を動く選手たちは“東洋の魔女”と呼ばれた。同時に、スパルタ式の練習で選手を育てる大松監督の“鬼の大松”という異名も広く知られるようになっていく。

“鬼監督”の異名にふさわしいスパルタ式練習

 1年365日、休みなく練習は続けられた。この回転レシーブ習得のために、1日8時間を費やす日もあった。

“レシーブ練習のために大松が打ち込む打数は3000球をゆうに超える。痛みに顔をしかめると、大松の怒声が飛ぶ。「痛かったら、痛くないようにやれっ!」”

“たとえ倒れた選手がいても、練習が終わることはない。「休んでないで、はよう立て!俺のことが憎いか。鬼なら鬼と呼べばいい」”(スポーツ感動物語 先駆者たちの道のり「東洋の魔女 世界一の練習でつかんだ金メダル」田中夕子著より)

 選手たちは、膝、肘、背中、肩など転んで床に触れる部分にはどこも青あざができたという。現在では、とても許されない指導法だろう。スポーツ界でも、ビジネスの世界であっても。しかし、それでも選手たちは監督に付いていった。この指導法の中にも、現在でも、参考にできる点はあるのではないだろうか。

鬼の表情で隠していたメンバーの成長を願う優しさ…

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執筆=藤本 信治(オフィス・グレン)

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