アスリートに学ぶビジネス成功への軌跡(第17回)前畑秀子。女性初の金メダリストを生んだ孤独な闘い

人材活用

2019.11.28

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 前畑秀子さんは、1936年(昭和11年)の第11回 夏季オリンピック ベルリン大会の200m平泳ぎで金メダルを獲得した。日本女子初の金メダル獲得というその輝かしい業績は、実況アナウンサーの「前畑頑張れ!」という絶叫と共に今日でも広く知られている。

 そのようなはるか昔のオリンピックに思いを巡らせていたからか、懐かしい昭和の人気テレビドラマ「細うで繁盛記」の残像が頭の片隅に住み着いてしまった。同ドラマは、新珠三千代さんふんする大阪生まれの主人公が、嫁ぎ先である伊豆熱川の旅館の再興にひたむきに取り組んでいく物語。ドラマの冒頭に「銭の花の色は清らかに白い。だが、つぼみは血がにじんだように赤く、その香りは汗の匂いがする」というナレーションが入る。

 オリンピックに向けた前畑さんの「頑張る」姿が、その血がにじんだように赤いつぼみに重なる。

 前畑さんは、ロサンゼルス大会(1932年)にも出場している。200m平泳ぎに出場し、結果は1位と0.1秒差の2位。自己の日本記録を大幅に更新し、銀メダルを獲得したことに大きな達成感を覚えていた前畑さんだが、帰国後、人々の思いもしなかった反応に驚かされることになる。

金メダル獲得を至上命令とする国民の声

 祝賀会では、東京市(現東京23区)の市長から、こんな言葉が投げかけられた。

「あなたはなぜ金メダルをとってこなかったんだね?いいか前畑さん、この悔しさを忘れずに、4年後のベルリンオリンピックではがんばってくれよ」
(『スポーツ感動物語 先駆者たちの道のり~前畑がんばれ!』小林良介 著)

 その言葉は当時の日本国民の声を代弁していたようだ。「なぜもう一息頑張れなかったんだ」という声はあっても、銀メダルをたたえる声はほとんどなかった。和歌山県橋本市の実家に戻っても、同じような内容が書かれた手紙が山のように送られてきていたという。

 家庭の事情もあり、ロス五輪後の引退も考えていた前畑さんは、全国から届く激励に押し流されるように現役続行を決意する。

 18歳の少女は猛練習を再開した。朝5時に起床して走り込み、1日に2万m泳ぐ。この練習を1年365日休まず続けた。全身の筋肉が痛み、歩くことすら困難なときも、はうようにしてスタート台まで自らの身体を運んだ。まだ温水プールはなかった時代。寒い日に水面に薄い氷が張ったようなプールに飛び込んでひたすら泳いでいると、やがて汗が流れるのが分かったという。そんな日々が続いた。

過剰な期待を感じさせないのも大切な配慮…

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執筆=藤本 信治(オフィス・グレン)

ライター。

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