アスリートに学ぶビジネス成功への軌跡(第12回)陸上の新星、サニブラウンが見据えるゴール

人材活用

2019.06.27

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 レース直後のインタビューで「正直、あまり実感はないんですけど。まだ早いタイムが出ると思っているので」と、20歳の青年は答えた。

 2019年6月7日(日本時間8日)、米国テキサス州オースティンで開催された全米大学体育協会(NCAA)野外陸上競技選手権大会の男子100m決勝において、サニブラウン・アブデル・ハキーム選手は3位に入った。そのタイムは9秒97。それまで桐生祥秀選手が保持していた9秒98の日本記録を100分の1秒更新し、日本新記録を樹立したのである。

 恐らくインタビュアーは、「日本新記録を達成した今の気持ちは?」といった質問を投げかけ、喜びに破顔するサニブラウン選手をイメージしていたのであろう。実際は、前述のように答えるサニブラウン選手の表情からは偉業を成し遂げたという高ぶりもおごりも感じられない。むしろ生真面目そうな印象だ。

 「実感がない」という言葉は、中国北京で開催された2015年世界陸上競技選手権大会の後、「振り返ってみて、大会の印象は?」と質問された際にも使われている。当時高校2年生だったサニブラウン選手はこう答えている。

「実感がありません。走ったには走ったのですが……。何か残したものがあったわけではない、というのが感想です」(月刊陸上競技2017-10 第51巻 第11号「サニブラウン・アブデル・ハキーム 16歳の夏」)

 その大会で、サニブラウン選手は残したものがないどころか、男子200m予選で、同種目における大会史上最年少の準決勝進出という快挙を成し遂げているにもかかわらず、だ。

東京五輪は、サニブラウンの五輪になるはずだ

 身長188㎝と体格に恵まれたサニブラウン選手は、100mなら44.7歩で駆け抜けるという。彼にとっては、日本新記録を達成した喜びも、世界中が驚いた最年少での準決勝進出も、めざすゴールに向けた一歩にすぎないのかもしれない。そこにとどまり、自分が成し遂げた結果の余韻に浸ることなく、次の大きな一歩を踏み出すことにすでに集中しているのではないだろうか。

 では、サニブラウン選手にとってゴールとはどのようなものなのか?城西大学附属城西中学・高等学校の陸上部時代に6年間にわたってサニブラウン選手を指導した山村貴彦監督は次のように話している。「彼の目標は世界記録更新と国際大会のメダル。来年の東京五輪はハキームの五輪になるはずだ」と。

 その大きな、いや、彼にとってはリアルなゴールに向けて疾走する今、何歩目を踏み出そうとしているのだろう。

「遠回り」という機会を与え、人材の成長を見守る…

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執筆=藤本 信治(オフィス・グレン)

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