アスリートに学ぶビジネス成功への軌跡(第48回)F1を駆け抜けた孤高の天才 アイルトン・セナ

人材活用

2022.06.14

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 春が来て、F1(フォーミュラワン)の新シーズンが開幕しても、あまり関心を寄せることがなくなってしまった。しかし、5月になると、あの日、1994年5月1日からもう28年という歳月が流れたのか、という感傷的な気分で思い出の中のF1劇場がささやかに始まる。

 1990年のシリーズ開幕戦であるアメリカGPを私は現地で観戦した。私は、その年フェラーリのドライバーだったナイジェル・マンセルのファンを自認していたが、いざグランプリが開催されたアリゾナ州フェニックスの市街地コースに着くと、練習走行をするマシンの中に探すのは、ブラジル国旗をモチーフに黄色と緑のカラーでデザインされたアイルトン・セナのヘルメットなのだった。

 生涯65回のポールポジションを記録したセナだったが、このグランプリでは予選5位。マクラーレンチームが投入した新しいマシンに不具合が出たようで、またセナ自身もレースに対する情熱を失っていると報道されていた。前年までチームメイトだったアラン・プロストとの確執、その問題が凝縮された形で発生した1989年シリーズ終盤の日本グランプリにおけるプロストとの接触事故でセナは危険ドライバーであるとの烙印(らくいん)を押され、1990年シリーズのレース出場に必要なスーパーライセンスが発行されたのも開幕戦直前の2月という状況だったのだ。

 しかし、それでも、目の当たりにしたセナはやはりすごかった。裏ストレートでは、コンクリートウオール越しにわずか2m先を時速200数十キロで疾走するF1マシンを見ることができたが、セナのマシンが走り去るときだけ、私の頭は何かの力で大きく揺れた。衝撃波のようなものを受けたのだろうか。決勝でも、セナはティレルチームの新鋭ドライバーだったジャン・アレジと歴史に残る名バトルを繰り広げた末に優勝。あの胸が躍るようなクリーンなバトルでセナのドライバーとしてのモチベーションに再び火がついたようだった。

勝利に向けたストイックな生きざま 

 多くのレーシングドライバーと同様に、アイルトン・セナも少年時代に参戦したカートレースでの活躍を足掛かりにジュニア・フォーミュラ、F3とステップアップしていった。1983年の英国F3選手権では、実に9連勝を含む年間12勝を挙げ、チャンピオンに輝くと、念願のF1参戦への切符を手に入れた。

 こうした時代のセナがいかにひたむきにF1でのシート獲得、そしてレースでの勝利をめざしていたかを物語るエピソードがある。セナは1980年、20歳の若さで幼なじみの女性と結婚している。しかし、結婚生活は長く続かなかった。セナはその理由を次のように説明している。

「やはりどうしてもF1に行こうという決心をしたとき、すべての時間と関心をレースに向けなければならないと悟った。そうすると、結婚生活を送ってはいられなかった」
(F1速報 1992年ポルトガルGP ドライバーズヒストリー:アイルトン・セナ 大串信著)

 その姿勢はF1ドライバーとなってからも変わることはなかった。1985年、すでに当時の名門チームであるロータスのエースドライバーとなっていたセナは、翌86年のシリーズに向け、チームが彼のパートナーとして有力ドライバーを招こうとした際に強硬に反対している。

「パートナーは一流であるよりは二流であるべきだ。なぜならふたりのトップドライバーに同じ条件のマシンを準備することはむずかしいからだ」
(同著より)

 時には冷徹なまでのかたくなさを発揮し、セナは次の勝利に向けてひた走ったのだろう。

プロフェッサーに師事した天才…

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執筆=藤本 信治(オフィス・グレン)

ライター。

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