税理士が語る、経営者が知るべき経理・総務のツボ(第71回)外国人の進出著しいニセコ 税務調査での懸念材料

経営全般 資金・経費

公開日:2022.04.08

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(当時の朝日新聞の記事)

 2019年8月8日付の朝日新聞に「ニセコで30億円申告漏れ・国税指摘・外国業者ら土地取引」というタイトルの記事が掲載されました。内容は、北海道・ニセコ地区の不動産取引をめぐり、国内外の不動産会社や外国人投資家らが、札幌国税局から総額約30億円の申告漏れを指摘され、約10件・合計6億数千万円の追徴課税が行われたというものでした。

 この記事を読み、小職がまだ、東京国税局の国際調査関係の一部署の責任者をしていたときの調査事案を思い出しました。

 朝日新聞に掲載された記事は、土地などの不動産を直接売買する取引が調査対象でしたが、小職が携わった事案は、ニセコに土地やホテル、スキー場などのリゾート施設を保有する日本法人の株式を外国法人同士で売買するというものでした。

日本に恒久的施設を有していない外国法人同士の株式売買

 国際課税の大原則の1つとして「PE(恒久的施設:Permanent Establishment)なければ課税なし」というものがあります。これは、恒久的施設(いわゆる、支店・工場・営業所や代理人PEなど)が日本国内になければ、外国法人を含む非居住者は日本において課税を受けることはないという原則です。

 小職が携わった事案も、オーストラリア法人と香港法人の間における日本法人株式の売買取引であり、両社とも日本にPEを有していないため、原則では課税の対象にならないことになります。

 しかし、これには例外があり、非居住者が日本の不動産化体株式を譲渡する場合(その他に事業譲渡類似株式なども含む)は、その譲渡利益は日本で課税されるという規定が日本の税法にはあります(当事者の所在地国と日本の租税条約などの規定により、課税にならない場合もあります)。

 不動産化体株式とは、不動産関連法人(総資産の50%以上を不動産が占める法人)が発行する株式のことをいい、不動産化体株式の譲渡により発生する譲渡益は非居住者(外国法人を含む)であっても、一定の要件を満たした場合に課税されることになります。

 前述した外国法人同士の株式売買を把握したきっかけは、某マスコミ記事でした。記事の内容は、ニセコにリゾート施設を保有する法人の株式をオーストラリア法人と香港法人で売買したというもの。そこで小職の部署では当時、その課税の可能性を分析しました。

 分析の結果、売買の対象となった法人の株式譲渡は、不動産化体株式もしくは事業譲渡株式の譲渡に該当する可能性があり、国内にPEのない非居住者であっても課税できる可能性があるという結論に達し、税務調査に着手することになりました。

外国法人に対する税務調査…

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