税理士が語る、経営者が知るべき経理・総務のツボ(第76回)副業の原稿料収入も電子帳簿保存法対応が必要

業務課題 経営全般 資金・経費

公開日:2022.09.12

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 会社に勤務して給与を受給しながら、副業として講演や原稿の執筆などを行っている方も多いと思います。仕事をする傍ら、支払いを受けた原稿料については、通常雑所得となりますが、2022年分以後の所得税から、雑所得であっても請求書、領収書などの書類簿の保存義務が課される場合があります。

 この場合には、電子帳簿保存法の電子取引に関する電子データの保存義務の適用となります。この雑所得を生ずべき業務に関する2022年分から適用される改正内容について見ていきましょう。

雑所得を生ずべき業務に係る所得税の改正

 近年、シェアリングエコノミーといった新分野の経済活動が広がりを見せている中、国内のみならず、国際的にも適正課税の確保に向けた取り組みや制度的対応の必要性が課題として共通認識されています。

 こうした中で、国税庁においては、課税上の取り扱いに関する情報発信や課税上問題があると見込まれる納税者に対する“お尋ね文書”の送付などの行政指導や厳正な調査の実施を行っているところですが、こうした取り組みを制度面からも整備する観点から、雑所得を生ずべき業務に係る申告手続きなどについて次の3つの改正が行われ、2022年から施行されています。

(1)雑所得を生ずべき業務を行う居住者で、その年の前々年分の雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が300万円以下である場合には、簡便に所得金額の計算ができるように、いわゆる現金主義を採用することができることとなりました。

(2)雑所得を生ずべき業務を行う居住者で、その年の前々年分のその業務に係る収入金額が1000万円を超える場合には、納税者での適正な所得計算、課税当局での効率的な申告内容の確認ができるように、その者が確定申告書を提出する場合には、収支内訳書を確定申告書に添付しなければならないこととなりました。

(3)雑所得を生ずべき業務を行う居住者等で、その年の前々年分のその業務に係る収入金額が300万円を超える場合には、5年間、その業務に係る「現金預金取引等関係書類」を保存しなければならないこととなりました。

新分野の経済活動や取引の事例

 この新分野の経済活動や取引の事例としては、例えば、デジタルコンテンツ、ネット通販・ネットオークション、暗号資産、ネット広告アフィリエイトなど)、シェアリングビジネス・サービスなどがあります。

 この中の例えば暗号資産については、暗号資産を売却または使用することにより生ずる利益については、事業所得などの各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として雑所得に区分され、所得税の確定申告が必要となります。

雑所得を有する者の現金預金取引等関係書類の保存義務

 雑所得を生ずべき業務に係る雑所得について、従来、申告内容を証明する資料の保存義務は課せられていませんでした。従って、確定申告するに当たっては所得計算の基となる領収書などの資料を保存し、その資料に基づいて自ら所得計算して申告・納税するのが一般的でした。

 近年のシェアリングエコノミーなど新分野の経済活動が広がりを見せている中、その特徴として、①広域的・国際的取引が容易、②足が速い、③取引の実態が分かりにくい、④申告手続きなどになじみのない⽅の参⼊が容易という傾向から、適正課税の確保の要請が高まりを見せていました。

 納税者にとっては、申告内容の確認を受ける際の負担を軽減すること。また、客観的な資料の保存を求めることにより、自発的に適正な申告が行われる効果も期待できること。

 課税当局にとっては、所得金額の把握をより正確に行えるよう、制度により申告内容の確認を効率的に進めることを可能とすること。

 という観点から、納税者の書類保存に係る負担と課税当局における所得金額の把握をより正確に行う必要性とのバランスも踏まえて、以下の内容の改正が行われました。

雑所得を生ずべき業務に係る雑所得を有する者の現金預金取引等関係書類の保存義務…

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