戦国武将に学ぶ経営のヒント(第76回)

名言から学ぶ(4)戦国武将の仕事論

2021.09.13

クリップについて

 10年、15年と働いていると自分なりの仕事に対する考え方、いわゆる仕事論を誰もが持つようになると思います。戦国武将の大きな仕事は戦ですが、普段は領地のインフラ整備、経済政策、徴税などさまざまな仕事に関わっていました。戦や普段の仕事を進める中で得られた考えについて、武将は多くの言葉を残しています。

 徳川四天王の一人に数えられる井伊直政の次男で、大坂の陣で大きな戦功を立てた猛将・井伊直孝は次のように言いました。

 「先駆けの心がけとは、槍なくば刀、刀なくば無刀無具足でも、とにかく誰よりも早く取りつこうとすることだ」

 「先駆け」は戦で真っ先に攻撃を担う役です。交戦の口火を切る一番やりと共に、名誉とされていました。その先駆けで大事なのは、やりがなければ刀で、刀や甲冑(かっちゅう)がなくても、とにかく早く始めようとすることだというのです。

 現代のビジネスにおいて、「まずやってみる」大切さが指摘される場面があります。検討も思慮も大事ですが、そこで立ち止まっていては何も始まりません。やってみて初めて分かる課題、動いてみて初めて見える風景があります。まず、やってみる。まず、動かしてみる。そして、動きながら軌道修正していけばよいという考え方です。

 井伊直孝は、やりや刀を準備できればそれに越したことはないが、そうした準備が整わなくても、誰よりも早く取り付き早く始める心掛けが大切と言っています。特にビジネスにスピードが求められている今、直孝の言葉はより重みを持っているように思えます。

 先駆けに関しては、農民の身から天下人に上り詰めた豊臣秀吉が面白い言葉を残しています。出世街道をひた走る秀吉は目立つ存在で、周りから妬まれやすい人物でした。

 そこで、ある人がこのような歌を詠みました。「人は皆 さし出でぬこそ よかりけれ 軍(いくさ)の時は先駆けをして」。人は先んじて目立つようなことはしないのがいい、戦のときは先駆けがいいが、という意味です。

 これに対し、秀吉は次のように返しました。「人はただ さし出づるこそ よかりけれ 軍の時も先駆けをして」。人は常に先んずるのがいい、戦のときももちろん先駆けして、との意趣返しです。

 先んずることは重要ですが、準備をしなければいいというわけではありません。武田家の家臣だった山県昌景は勇猛として知られ、武田信玄の戦では常に先陣を任されたとされる武将です。その昌景は、次のように語っています。

 「武士の心がけとしては、その場に臨んで始めるようでは駄目だ」

 戦場に立ってから準備を始めるようでは駄目で、戦場に向かう前にしっかりと準備をしておけという意味です。先陣を任されていた昌景の言葉だけに、別の角度から考えると、準備をしておけば先んずることができるといえそうです。

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