一億総スマホ時代の昨今、ほぼすべての人がスマホのカメラ機能で写真を撮って楽しんでいる。スマホの普及につれカメラの売れ行きは落ち込み、衰退するかに思われた。ところが昨年3月発売された、キヤノンの「EOS Kiss M」が売れ行き好調だ。1年近くたった今も、さまざまなデジタル一眼売上ランキングのベスト3内に常時ランクインしている。
EOS Kissは、キヤノン製一眼レフカメラの入門・ファミリーユース向けシリーズとして位置付けられる。EOS Kiss Mはシリーズ初のミラーレス一眼だ。ミラーレスは、通常の一眼レフに比べて軽量でコンパクトなのが特徴だ。そのうえ操作も比較的簡単、なのに“一眼画質”を楽しめる。スマホで写真に親しんだユーザーが初めて持つのにもオススメだ。
相変わらずカメラ業界は苦戦が続く。だが、EOS Kiss Mをきっかけに、ミラーレス、一眼レフのデジカメが活気を取り戻しつつあるようにも見える。スマホで簡単に写真が撮れるこの時代、デジタル一眼の人気の理由、スマホとの使い分けなど、スマホ時代のカメラの在り方を探ってみたい。
ミラーレス一眼は写真の楽しさを知ったユーザーに最適
スマホで撮影し、アプリで加工や修整したり、猫耳や犬の鼻を付けたり、顔を取り換えたりなどは楽しい。スマホの場合、家族や友達への共有もたやすい。「一億総スマホ=一億総カメラマン」ともいわれるゆえんだ。
撮影が身近になり、写真の楽しさに目覚めた人も多いだろう。スマホのカメラ機能はIT技術の粋を集め、なかなか良く撮れる。ただしレンズ自体は小さく、質感やリアリティーはどうしても限界がある。より高度な専用のツールを試してみたいと興味が湧くのは、決して不思議ではない。
学生の頃から一眼レフを愛用してきた筆者も、このところほぼすべての写真をスマホで済ませていた。便利だからだ。ところが、写真には複数の玉を組み合わせた「レンズ」と、像を結ぶ「箱」がやはり必要だと、ハタと思い至った。どうせ持つなら画質の優れた一眼がいい。だが、一眼レフのかさばり具合には苦い経験がある……。というわけで、コンパクトなミラーレス一眼を入手。手のひらに載るサイズで気軽に持ち歩けるのに、画質も機能もそこそこ満足できるのが気に入った。そんなときにEOS Kiss Mのニュース。やはり皆、考えるところは同じだなと思った。
筆者愛用のミラーレス一眼(キヤノンEOS M2+18-55ミリのズームレンズ使用)。短い単焦点レンズを付ければ、手のひらに収まる
スマホのカメラの弱点…
カメラは、長さのあるレンズと像を結ぶ空間となるボディーを備える。一方、スマホのカメラは、薄いスマホの裏の隅にはめ込まれたわずか数ミリのレンズで撮る。つまりスマホのカメラは、ITテクノロジーがかなりの部分を担っている。数ミリのレンズで捉えた情報を基に、画像を“創っている”ようなものだ。多少のブレやボケも、暗さも逆光も拾ってそこそこキレイに仕上げる。いわゆる「失敗」が少ないが、専用カメラが結んだ画像のリアルな質感や空気感にはかなわない。
加えてスマホの写真が苦手なのは、(光学)ズームがないので映したいものに寄れないところ。逆に、映したいものが画角に入らないこともある。撮りたいシチュエーションに応じて自由自在に画角をコントロールできるズームレンズや、ボケの美しい大口径レンズ、画角の広い広角レンズなど、レンズ交換できるカメラほどの実力はない。
一眼タイプでもミラーレスがなぜ好まれるか
家電量販店のカメラコーナーをのぞくと、スマホのカメラと“機能が被る”ゆえんか、コンパクトカメラはごくわずか。ただし、名レンズを備えた高級コンパクトは人気がある。だが写りも味がある一方、価格は一眼並みに高い。主にスペースが割かれているのは、一眼レフとミラーレスだ。一眼レフは大きくて高機能・高価、プロ・セミプロ向け的なものが多い。ミラーレスはコンパクトで安価で見かけもオシャレ。やはり手を出しやすいのはミラーレスかな、と思う。
一眼レフは、カメラの中にある鏡(レフ)に、レンズが捉えた像を反射させ、光学ファインダーを通して見る。ミラーレスは、その名の通り鏡がない。レンズが捉えた像を変換して、電子ビューファインダーや液晶モニターに映す。鏡がないぶん、ボディーはコンパクトになる。仕組みも簡易なので、一眼レフよりも比較的安価となる。
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一眼レフとミラーレスの構造の違い[/caption]
今どきのミラーレスは、シャッター1つで簡単に撮れるほか、手ぶれ防止、子どもやペットなどの動く被写体にも素早くピントを合わせる。シーンを選んで“こだわり”の写真も撮れ、撮った写真はスマホに自動送信する機能も保有する。高感度撮影機能で暗い場所でも撮れる、画質のキモとなるイメージセンサーも一眼レフ並みだ。
また同時に、見逃せないのが動画機能だ。最近は、ハイビジョンはもちろん、4Kや8Kにも対応するものもよく見かける。スマホでも動画は撮れるが、やはり品質が違う。EOS Kiss Mは4K動画も撮れるが、実用的なのはハイビジョンサイズの秒間60コマ。通常の動画は30コマだが、60コマならスポーツも子どもやペットの動きも滑らか。最近はテレビ番組の撮影さえも、デジタル一眼を使うケースがあり、昔のようなムービーカメラは不要ともいわれるほどだ。
ミラーレス一眼のコンパクトさで、高画質な写真と滑らかな動画が撮れるならまさに最強ともいえる。ただし各社各モデルの機能や性能には違いがあるので、自分に合ったモデルをよく見極める必要がある。
スマホと専用カメラを使い分け
スマホのカメラはダブルレンズやトリプルレンズを備えたり、後からピントを変えられたり、IT技術の“粋”を集めて機能を高度化させている。確かに、いつでもどこでも持ち歩けてすぐに取り出して撮影できるスマホは、何かと都合がよい。スマホのカメラ機能は、今後もどんどん発展すると考えられる。
とはいえ、やはり専用機にかなわない領域はどうしても残る。だから、我が子の成長記録や、旅行やイベント、特別なシーンなどには専用カメラ、しかも一眼タイプを使う。そんな感じで、スマホと専用カメラを使い分ければよい。皆さんも家電量販店などで、ミラーレス一眼をはじめとしたカメラを手に取ってみては?