オフィスあるある4コマ(第32回)
迷子の社長さん
公開日:2021.07.12
いつ人生の終末を迎えるかは分からない。親戚の祖母が亡くなったとき、いざというときには何をどうしてくれという指示が細かく書かれたノートが出てきて、家族が困らず助かった。だがこんなケースはまれな部類で、たいていの場合、誰それが急に亡くなって何をどうしたらいいか困った話のほうが多い。
万が一に備えて準備をしておくことを、最近は終活と呼ぶ。さらに、死後のために書き記しておくノートをエンディングノートと呼ぶ。近頃は項目が印刷され、書き込むだけで完成するエンディングノートなるものが文房具店で売られていたり、スマホやパソコンに書き記せるアプリもあったりする。
デジタル社会においては、IT機器内のデータやインターネット上のデータ「デジタル遺品」がたくさんある。もしもの際に、契約している回線、固定電話や携帯電話、モバイル通信、サブスクサービス、SNSやクラウドストレージの中身はどうなるのだろうか?
そんな中、三井住友信託銀行と日本IBMがクラウドで終活を支援するニュースが少し前に話題になった。サービスのページを見ると、「人生100年時代の終活を応援。おひとりさま信託、エンディングノートをデジタル化」というキャッチが目に入る。単身者や身寄りのない人、家族と離れて暮らす人向けに、万が一の際の身の回りの死後事務をトータルでサポートする“おひとりさま信託”だ。
おひとりさま信託では、エンディングノートで契約者の死後のさまざまな希望を実現する。エンディングノートは高いセキュリティを確保したクラウド上に置かれ、契約者はスマホやパソコンからマイページにログインして、いつでもエンディングノートを確認・更新できる。
それに加え、希望するタイミングで携帯端末へSMSを送り、安否確認を行うサービスも提供。死後はエンディングノートに従い、預けた資金を用いて葬儀・密葬、訃報連絡、デジタル遺品の消去、家財などの整理、ペットの終身管理などの死後事務を代行するシステムだ。
公的な遺書は訂正や撤回はできるものの、手続きにいちいち手間や時間がかかる。このサービスのエンディングノートは即時に改変が可能で、改変直後に何かあっても最新の内容に従って意思通りに事務が行われる。クラウドに置かれたノートは、自分だけが管理できる仕組みで、他者に見られない。死後の事後処理は身内や友人が行うとトラブルの可能性もあるが、本人の遺志に沿って専門業者が行う場合、信頼度も高い。
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執筆=青木 恵美
長野県松本市生まれ。独学で始めたDTP(パソコンによる机上出版)がきっかけで、IT関連の執筆を始める。執筆書籍は『Windows手取り足取りトラブル解決』『見直すだけで安くなる、スマホおトク術』など20冊あまり。Web媒体は日経XTECH、Biz Clipなどに執筆。日経XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年にわたって長期連載した人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体では日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞などにも執筆。現在は、日経PC21に「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clipに本連載「IT時事ネタキーワード これが気になる!」を好評連載中。
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